カードゲームとしてはとても簡単。
まず、ひつじが1~4匹描かれたカードを5枚ずつプレイヤーに配る。
スタートプレイヤーは「ひつじがいっぴき」と言って手札からひつじ1匹分のカードを出す。
次のプレイヤーは「ひつじがにひき」と言ってやはり手札からカードを出す。
この時、カードは何枚でも構わない。1匹のカード2枚でも、2匹のカード1枚でもいい。
とにかく、羊が2匹分のカードを出せばいいのだ。
当然、その次のプレイヤーは「ひつじがさんびき」と言って3匹分のカードを出す。
これをどんどん繰り返す。

1匹のカードを持っていたら、リセットして「ひつじがいっぴき」から再度始められるが、リセットしなければ出すべきひつじの数はどんどん増えていく。
ちょうどぴったりの羊を出せない時は、山札からカードを引いて手番終了。
手札をすべて出しきったプレイヤーの勝ちだ。

その他に多少細かいルールはあれど、基本これだけ。
運の要素が強く、プレイヤーの腕が反映される余地はほとんどない。
「いやいや1の使い方だとか、そこそこ考えますよ」という意見もあるのはわかる。
だが、こと子供向けのゲームとして考えた時、「運がほぼすべて」はむしろ利点だ。




個人的な見解だけれども、ゲームの良いところはルールさえ守れば大人も子供も年齢に関係なく、対等に戦える遊びであるところだと考える。

この点で『ひつじがいっぴき』は理想的で、全力で戦う大人を子供が負かすことができる。多少は考える要素もあるので、子供は自分が考えた結果勝つことができた、という気分を味わえる。ここが重要。普段は色々教えてもらったり、時には怒られたりするお父さんを、自分の力で叩き伏せる。これは相当嬉しいことだろう。

だからこそ、負けた大人は、大いに悔しがるべきだ。勝った子供は大喜び。
そして大人が勝った時も全力で喜ぶ。それでこそ対等な勝負。
楽しく勝って、楽しく負ける。我が家の遊び方のモットーでもある。

そんな遊び方を娘が身につけられたのも、この『ひつじがいっぴき』のおかげだ。
2012年春のゲームマーケットで「絵柄もかわいいし、ゲームデビューにちょうどいいかな」と思って軽い気持ちで購入したのだが、これがどんぴしゃり。はじめて娘とプレイした時は娘が3連勝か4連勝だったはずで、その時の喜びようといったらなかった。今では『カタンの開拓者たち』やら『カルカソンヌ』やらを大人に混じってプレイできるまでになった娘だが、それもこれも『ひつじがいっぴき』でゲームの楽しさを知ったことからだろうと思っている。


ゲームの中身には直接関係ないことだが、カードの絵柄は実は3つのお話じたてになっている。普通の遊び方が難しかったり、飽きてしまったりした時は、これを使って遊べるところもすばらしい。お話の順にカードを並べるもよし、好きなように並べてオリジナルのお話作りを楽しむもよし。原田みどりさんの絵は、見ているだけでもそれだけで楽しい。



そんなところも含めて、小さい子供のゲームデビューにはうってつけの1作。

残念ながら発売元のグランデイングさんのページを見ると、在庫切れ(再販未定)となっている。
http://www.g-rounding.com/shop/2012/04/000160.php

ただ、萬印堂さんの通販ではまだ買えるようなので、気になったお父さんお母さんは是非。
http://mnd.shop-pro.jp/?pid=44196918